訪問看護師を目指そうとしているあなたへ

白十字訪問看護ステーション統括所長 秋山正子

 私が訪問看護を始めたのは41歳の時、子供を授かったのが遅かったので、上の子供は小学校に入ったばかり、下の子供は保育園という子育て真っ盛りでした。

 看護学校の教員からの転職、始めに研修に行った淀川キリスト教病院の訪問看護室の主任からは、「学校の先生ほど使えないものはないから」と始めから呆れられながら、在宅で暮らす方、ことに「末期癌の方の在宅ホスピスを看護師として実現したい」一心で、自転車に乗りながらあちこちに訪問する日々が始まりました。
 個別性に富む在宅の現場では、自分の生活経験が物を言います。それまで、兄弟が多く親は明治生まれで年代の差もあり、「いつも割が悪いな」と思っていたのですが、末っ子だけれど、小さい時から姪や甥の世話をした経験も含めて、在宅生活の中で暮らす、病人や、障害者のケアの工夫に役に立ちました。

 また、それまでの臨床経験は、周産期が多かったのですが、在宅では本当にさまざまな病態の方に出会いました。日々勉強ですが、分からない事は分からないといい、教えてもらい、自分でも調べ、経験した事のない技術的なことは始めは同行してもらいという日々でした。沢山の方の看取りに参加させていただく中で、一人一人の人生が、宝石のように輝く場面を見せていただき、こんな経験は訪問看護ならではと、本当に感謝している日々です。看護師以外の在宅チームの方とも、沢山知り合いになり、病院を飛び出した看護師達との新しいつながりも増えました。


「訪問看護の魅力」を語ると尽きる事が無いのですが、病院勤めから変わるときや、一度、辞めてしまって、ブランクがある方の場合は、どうしても不安が付きまといます。多くの方が、「一人で訪問するのって怖い気がする」という事を言われます。

確かに、訪問看護は一人で訪問先へ出向き、家族の方と会話しながらケアを行ないます。自分のしていることがこれでいいのかとまだまだ自信が無い時に、じっと見られているようで不安だったなどの声も聞かれます。

 確かに一人で行く事は不安でも、その時に迷ったりする時には、必ず、先輩看護師に電話で相談したり、医師に連絡したり、事務所に戻って、報告しながらチームで、取り組めるようにしたり、工夫はいくらでもできるのです。

 一人で行くけれども、一人じゃない、逆に病院では人が沢山いるから自分で考える事が無く、自分の看護の力が出し切れなかったけれど、在宅ではそれが発揮できるという声も聞かれます。看護師の個性も輝く在宅の現場に是非、一歩を踏み出して、私たちの仲間になってください。待っています。